1月
接着剤5代目摺師・竹中健司
絵具の粒子だけでは紙からはがれるので、絵具を紙にくっつけるために接着剤を混ぜて、絵具は作られます。強く接着するには膠(にかわ)を使用し、アラビアゴム→ふのりの段階で弱まっていきます。大きく分けると動物性→植物性→海藻です。絵具の粒子の大きさでその接着剤を変えていきます。
浮世絵 美人画 高島おひさ
背景には光沢のあるキラ(雲母の粉末)を摺って仕上げます。このキラは海藻の、ふのりで接着します。華やかな演出は美人を一層引き立ててくれます。
絵師喜多川歌麿
16,500円(税込)から
版画の絵はがき 京の植物 松の葉
金色の絵具は原料が鉱物系で粒子が荒いため、植物性のアラビアゴムでゆったりと溶いて作ります。摺る時には軽くふわっと、紙の上にのせるように力を加減します。
作者加藤光穂
385円(税込)
木版和紙 だるま
コロンと可愛いだるまの絵具は顔料の基本色の朱にほんの少し黄を混ぜて。水を入れ熱で溶かした動物性の膠を混ぜて作ります。膠は沸騰すると粘着が弱くなるので、程よい温度で丁寧に溶かします。
作者原田裕子
1,045円(税込)
2月
版木のおヘソ6代目摺師・原田裕子
摺りの仕事では、様々な版木をさわります。新しく彫刻されたものだけでなく、繰り返し摺る版も多くあり、先方や自社の蔵で眠っている版を出してきて使用します。普段よく使われている版は調子を出しやすいのですが、久々に摺る版は版木がおヘソを曲げているのか、どことなく摺りづらく感じるということが多々あります。そんな時は、いつもより慎重に版や紙の湿り具合や絵具の調子など今の最適を見つけるため、お久しぶりの版と対話しながら、ご機嫌をうかがい摺らせてもらうのです。
3月
間透彫師・野嶋一生
間透と書いてアイスキと読みます。一般的に平刀と呼ばれている彫刻刀です。版木を彫る際の仕上げに使用し、これを「透き取り」といいます。刃の切れ味が良くないと版を欠かすことになるので、こまめな手入れが必要です。版と版の間を彫るのでいろいろなサイズがあります。彫師によって違いますが私は刃幅3mmのものがメイン間透です。
4月
糊5代目摺師・竹中健司
摺る時に版木の上で絵具と共に糊を混ぜます。イメージは版木に絵具を糊で定着する感じです。これにより絵具を均一に版木の上に敷くことが出来ます。逆に糊を混ぜないで摺ると、絵具が紙に均一に摺れないので、ゴマ(ブツブツと絵具がつかない所)が出来ます。
5月
和紙摺師・森愛鐘
摺師はいろんな種類の和紙に木版画を摺りますが、和紙それぞれの個性に合わせて摺り方を調整しています。ある和紙はとても摺りやすく優秀なのですが、絵具が乾く前と後とで色が大きく変化するという個性を持っています。乾く前は濃い色が、乾くと驚くほど薄くなってしまうのです。その個性を踏まえて絵具を濃く作り、試し摺りでは念入りに乾かしてチェックする訳ですが、見本よりずいぶんと濃い色で摺り進めていると、ついつい不安になってきて少しだけ水を足してみたりします。そうして上手く摺れたと思って乾かと・・・あぁ、やっぱり薄いのです。またやられた・・・と思うのです。
6月
発見6代目摺師・原田裕子
私は絵を描くことの喜びのひとつに “発見”があると思っています。対象物への発見、描き方の発見、意味の発見。小さな「みつけた!」に心が躍り、それを近くの人に伝えたくなります。のぞいたり、俯瞰したり、連想したり、調べたり、なんとなく手を動かしたり・・・。次の発見までのためのうろうろも楽しい工程なのです。
7月
曲線彫師・野嶋一生
曲線を美しく彫るためには、小刀への力の加え方が肝心です。刃を版面に入れてから抜くまで力を一定に伝えつつ、スーッと切りましょう。動きのブレは形のブレにつながるので、気持ちがブレないように、普段から出来るだけぼんやりとした状態であるようにしてください。
8月
ブラシ5代目摺師・竹中健司
版木に絵具を引く道具はブラシ(刷毛)を使います。小学校の時はローラーを使ったと思います。日本の水性木版画では馬の毛のブラシを使い、彫刻された細かい溝に絵具が溜まらないようにかき出しながら、摺る面には絵具を平均的に平らに引きます。その2つの行為ができて、初めて綺麗に摺れる準備が版木(はんぎ)の上で整います。